2007年6月12日

DIRのレポートに反論中

DIRのドリカムと株価の関係というレポートに対して反論しています。ほぼ完成していますが、友人に送信して、コメントをいただいてからアップロードしたいと思います。

作業中にふと見つけましたIT Mediaの記事です(こちら)。レポートの著者の吉野氏は、サザエさんと株価の関係(こちら)の著者だとわかりました。このIT Mediaの記事もめちゃくちゃですが、何よりこのレポートと同じような手法でこの本を書いているとしたら(読者のコメントを読む限り、その可能性が高いです)、大変恐ろしいことです。腰が抜けそうになりました。

私は行動ファイナンスの専門家ではないのでよくわかりませんが、行動ファイナンスが行動経済学の一部(応用分野の一つ)だとすれば(多分そうみたいです)、サザエさんと株価の関係というのは、この分野の研究領域ではないはずです。行動ファイナンスはトリビアみたいな事象を発見する学問ではありません。
行動経済学については、今思うと修士時代に読んだ論文がそのジャンルに組み込まれていたのかも、という記憶があります。行動経済学は面白いので、入門書として友野氏の著書(こちら)を参考にしてください。近々この本の書評をしたいです。

最後に上述のIT Mediaの記事について

経済分析のファクターに投資家の心理や行動を織り込んだ学問は「行動ファイナンス」と呼ばれる。近年研究が盛んで、代表的な研究者である米国のダニエル・カーネマン氏は2002年にノーベル経済学賞を受賞した。
吉野さんの研究もこれに基づくわけだが、TOPIXとの相関などの中から発見した“法則”をいくつか別稿にまとめた。どうやら、投資家の行動が“外向き”になっているときは、株価も上がりやすいようだ。


この上半分はいいとして、吉野氏のやっていることは経済分析に基づかないため、主張や思い込みの類と言われてもやむをえないでしょう。投資家の心理や行動というのは、「外向き」という定義もよくわからないものではなく、たとえばリスク回避度や時間選好率といった従来の経済学では無視されてきた人間の感情・感覚です。行動経済学では、こういった目に見えない要素を肯定するために、心理学や医学などを取り込み、伝統的な経済学に反論しています。
現在研究中の学問とはいえ、しっかりと確立した学問であり、吉野氏のいうようなtriviaとは全く関係ありません。相関係数だけで物事を議論できるほど経済学は簡単ではありません。

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